拘束元絵

そうだな。アレはフェザーバーが加入するよりもずっと前の話だ。
いつも通りボスから仕事貰って――ある裏組織の幹部の暗殺だったか。いつも通り馴染みの情報屋に場所とかなんとか聞いてみたりしたんだわ。
その時の情報屋が裏切ってな……敵さんにこっち側の情報漏らしたんだわ。その情報屋はブチギレたボスにコマギレにされたらしいが……おっと話が逸れたな。
それなりに時間かけて準備万端にして、敵が予測できないようなルートを選んでアジトに潜入したにも関わらず、後ろからハラをぶち抜かれた。
色々と訓練はしてるが流石に突然の事すぎてびっくりして反応が遅れたんだわなー。一気に拘束されて牢にぶち込まれたわ。両腕後ろで固定されて。ご丁寧に魔力を封じる首輪まではめやがって。
一応撃たれた傷の手当てはされたからちょっと不思議に思ってたんだが、その理由がまぁなんとクスリの実験体。仕事上それなりにタフなのを利用されたんだな。
クスリが悪かったのかショックがでかすぎたのかは判らんが、だいぶ色々やられたはずなのにその辺の殆どの記憶がすっぽ抜けててな……まぁ覚えてる範囲で話すわ。
一つはイケナイクスリを盛られたかな。とんでもなくやべえの。高揚感だとかいうレベルじゃない。痛みすら快楽に変わるってどんだけヤバいんだって。
ナイフでつつかれたりなんだりされるけどすっげーキモチイイの。痛くない。血が伝う感覚ですら気持ちいいって訳わからんわ。唯一脚は開放されてたから届く範囲で噛み破ったりして自傷までしてたわ。
でもその分反動もデカい。クスリが切れたとたんに激痛。あと出所の無い恐怖に襲われて。助けられた後も長い間このクスリの後遺症には悩まされたね。
で、もう一つの覚えてる限りでの一大イベントはその状態での拷問用かなんかのクスリ。痛みを増幅するとかなんとか。
クスリが効いてれば快楽の絶頂。クスリが切れれば苦痛のどん底。快楽で気を失ったのも痛さで本気で死ぬこと考えたのもこれが最初で最後だわ。というかそれ以外にあったら困る。
キモチイイのはこの際置いておいて痛いのが本気でヤバい。悶え苦しむとかいうレベルじゃなくて、気を失うことすら許されない、毛1本たりと動かせないぐらい。
あとはなんだったかな……やっぱりあんまり思い出せねえや。
とりあえずそれで音信不通になり、しばらく帰ってこないからマズったんじゃないかって情報屋に聞いたら、うっかりそんな話を漏らしたとかでボス激昂。まぁココ人員少ないし。
敵さん壊滅させて俺を連れ帰ってきたそうな。俺だいぶイカレてて全く覚えてないけど。
その後我が事務所の敏腕仕事人うさ子氏が尽力してくれたおかげで廃人化は免れて、現在こうやって現場復帰出来てる訳だ。
後でうさ子ちゃんに俺は今言ったことの他に何やられたのかさりげなく聴いてみたけど「知らない方がいいヨ」って教えてくれない。マジ何があったんだ俺。
とこんな感じか。ヘマして監禁されてヤク漬けにされたどーしようもないアホの話だ。どーしようもないから終わり終わり。




2013年9月29日公開